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バッテリーフォークリフトをご使用の場合、バッテリー液(精製水)を補水する作業は欠かせません。管理が不適切だと、バッテリーの短命化にもつながります。今回は、バッテリー補水作業について紹介します。
バッテリー液の成分って何?そもそも、補水作業はなぜ必要?
バッテリーの電解液の成分は希硫酸です。希硫酸とは、硫酸と精製水(不純物を取り除いた水)を混ぜ合わせたものです。この希硫酸とバッテリー電極が化学反応を起こすことで電気が作られます。
バッテリー内で充電や放電が行われると、希硫酸に含まれる硫酸が電極と水の間を行き来します。充電すると、電極と硫酸が化学反応を起こして希硫酸の濃度が上がります。一方で、放電すると水が生成されて希硫酸の濃度は薄くなります。
バッテリー内の精製水が減る理由
理論上は充電と放電のサイクルでは希硫酸に含まれる硫酸が電極と水の間を行き来するだけですので、精製水の量は変わりません。 しかしながら、以下の3つの要因によって、実際は精製水の量が徐々に減っていきます。過度の充電
満充電の状態からさらに充電がされると過充電となります。バッテリーの過充電を完全に防ぐことは難しく、通常の充電時でも僅かに過充電は起こります。過充電が起こると、電気分解によって水が水素と酸素に分解され、水の量自体が減ってしまいます。
この反応は、劣化が進んで電圧が下がっているバッテリーのほうが顕著に起こります。 過充電によって発生した水素がバッテリーの電極と反応すると、端子が腐食してしまい、電気が通りにくくなる現象が起こります(サルフェーション)。
自然蒸発
バッテリー液が減るもう一つの理由に、自然蒸発が挙げられます。気温が高い夏場などは特に水分が減少しやすくなります。
バッテリー液が漏れている可能性も
急激にバッテリー液が減っている場合は、液漏れしている可能性が考えられます。バッテリー本体が劣化していたり、取り付けに不具合があったりすると液漏れが発生しやすくなるので、留意しましょう。
液漏れが原因でバッテリー液が減っている場合は、根本となる不具合を解決する必要があります。何度バッテリー液を補充しても液漏れが解消することはありません。バッテリーそのものの故障にもつながる可能性があるので、きちんとディーラーや整備工場でメンテナンスを行いましょう。
精製水が減ると短命化する理由
精製水が減ると、バッテリー内の電極が液に十分に漬からず、空気に剥き出しになります。空気に剥き出しになった部分の電極は劣化してしまい、あとで再度液に浸けてもその部分は化学反応が起こらず充電ができなくなります。
そのため、液量が規定以下となっている状態で使用を続けると、劣化はどんどん進行します。液量が減少したままで使用すると、バッテリーの寿命が短くなったり、最悪バッテリーが壊れてしまう場合もあるので留意が必要です。
バッテリー液が少なくなるリスク
バッテリー液が少なくなると一体どんなリスクがあるのか、フォークリフトを扱う方はきちんと知っておく必要があります。主なリスクを2つ紹介しますので、しっかりポイントを抑えておきましょう。
バッテリーの劣化
通常、バッテリーの極板と呼ばれる金属部分はバッテリー液に浸された状態です。しかし、なんらかの原因でバッテリー液が減少し、金属部分が露出した状態が続くと劣化する可能性があります。
極板が一度劣化すると、いくらバッテリー液を補充しても復活することはありません。バッテリーを長く愛用するためにも、バッテリー液が不足していないか定期的にチェックしてください。
爆発や火災の危険性も高まる
バッテリー液が減少し、金属部分の極板が長時間露出すると腐食が始まります。極板が腐食したまま稼働を続けると火花が発生する可能性があるので注意しましょう。
エンジンルームは水素ガスが発生しやすい環境です。火花により水素ガスに引火すると爆発を引き起こす場合があります。重大な事故を防ぐためにも、日頃からバッテリー液の補充を心掛けてください。
フォークリフトバッテリーの補水方法
液量が減ったバッテリーには精製水を補充します。※水道水は絶対に使わないようにしてください。水道水の成分の中には、不純物が入っていますのでバッテリーの極板の腐食を早めバッテリー寿命の短命化につながります。カウンター式フォークリフト
ハンドル付近にバッテリーの蓋を開くためのレバーがあります。蓋を開けたのち、誤って蓋が閉じないようストッパーを立てます。 注水口に精製水タンクのコネクタを繋ぎ、注水を行います。 フロート(注水部にある浮き)の白いラインが見えれば液量は十分ですが、見えない場合は白いラインが見えるまで精製水を補充します。なお、フロートが引っかかっていてしっかりと浮いてこない場合もあるので、気を付けましょう。リーチ式フォークリフト
運転席のレバーを踏みながら前方のフォークを前出しすると、バッテリーが出てきます。注水作業は、カウンター式と同様です。 注水後は注水口のキャップを閉めて、バッテリーを元通り収納すれば完了です。収納の際はコードの収まりに注意しましょう。注水時の注意点
●液の入れすぎに注意してください。吹きこぼれたり、バッテリー液の比重低下によって性能が落ちる場合があります。吹きこぼれた場合は、ウェス等でふき取りましょう。
●バッテリーには希硫酸が入っています。もしバッテリー内から飛んだ液が皮膚に付着した場合は大量の水で洗い流してください。
●バッテリー上面が汚れていたり濡れた状態だと漏電の可能性があり、フォークリフト本体にも影響が出ることがあります。バッテリー上面の汚れは取り除き、乾燥させた状態を保ちましょう。
●バッテリー内部には水素が溜まっている場合があります。充電は人気が無く換気の良い場所で行いましょう。火気は厳禁です。
バッテリー液が漏れたり、吹きこぼれた際の対処法
バッテリー液が漏れたり、吹きこぼれたりした場合は、肌や衣類に付着しないように注意しながら清掃作業を行います。バッテリー液の成分である希硫酸は、目や皮膚に付着すると大変危険ですので、手袋やゴーグルを着用するなどして作業を行いましょう。
また、衣類の材質によっては希硫酸により穴が開いてしまうことがあります。汚れても良い服装、穴が開いても問題ない服装で作業を行うことも大切です。
清掃作業には、中和洗浄剤を使用します。まずは漏れた液をしっかりと拭き取り、そこからスプレータイプの中和洗剤を使って拭き取り掃除を行いましょう。
フォークリフトのバッテリーに付着した粉はなに?
稀にフォークリフトのバッテリーに粉が付着している場合があります。粉が青色の場合は、錆の一種です。バッテリー端子やケーブルの銅が錆びてできた粉となります。
白い粉の場合は、バッテリー液が気化してできたものであり、希硫酸が再結晶し硫酸鉛となったものが粉となって付着しています。粉が付着した際はスプレータイプの中和洗剤を噴きかけ、少し時間を置いてから拭き掃除を行ってください。
作業時はゴーグルや手袋を装着するなどして、身体への影響を防ぎましょう。
バッテリー液の補充だけでは不十分?交換のタイミング
バッテリーは消耗品ですので、時期が来たら交換が必要です。バッテリー液の補充はあくまでも「バッテリーを長持ちさせるメンテナンス方法」の1つとして捉えておきましょう。
バッテリーの寿命はどのくらい?
フォークリフトのバッテリーは、4~5年と言われています。稼働状況によっても交換時期は異なりますが、不具合を感じるようになったら交換を検討しましょう。
寿命を迎えるギリギリまでバッテリー交換を控える方もいますが、不具合が起きてからではフォークリフトの故障につながる可能性もあるのでおすすめできません。きちんとバッテリー交換の時期を見極め、寿命を迎える前に入れ替えてください。
バッテリー交換のタイミング
交換のタイミングとしては、以下3つのポイントが参考になります。
- バッテリーが熱を持つようになった
- パワー不足
- 稼働時間が短くなった
使用毎にバッテリーをチェックする必要はありませんが、定期的にバッテリー周りに汚れが付着していないか、バッテリー液が足りているかなどをチェックしてください。
バッテリー交換の費用の目安はリーチ型で約60~110万円、カウンター型で約90~170万円が相場です。決して安くはありませんので、バッテリー交換の時期を想定してしっかり費用を積み立てておきましょう。
バッテリーが上がってしまったら?
バッテリーが上がるのは、放電状態を指します。電力の使用量がバッテリーの容量を上回ることで放電状態となり、いわゆる「バッテリーが上がる」現象が起こります。
バッテリーが上がった場合は、すぐに充電を行うと復活する可能性があります。ただし、放電状態が長く続けば続くほど回復が難しくなるので注意が必要です。
バッテリーが再始動した場合でも、きちんと点検を受け、このまま稼働を続けて良いかチェックしてもらいましょう。
バッテリー液が少なくなったらすぐに補充!定期点検も受けよう
バッテリー液が減ったまま稼働を続けると、劣化や故障、爆発のリスクを伴います。バッテリーを長く愛用するためにも、定期的にバッテリー液を補充してください。補充作業を行う際は、肌や衣類にバッテリー液が付着しないように注意しましょう。
バッテリーに限らず、フォークリフトは定期点検が大切です。日頃からきちんとプロにみてもらい、長くフォークリフトを愛用してください。