廃棄物と有価物の判断について

廃棄物と有価物の判断について

産業廃棄物の処理を担当される方の中には、廃棄物を少しでも有価物にできるよう工夫している方も多いのではないでしょうか?

有価物と判断されるものは、原則として廃棄物処理法の適用外となります。そのため、廃棄物処理業の許可や委託契約書、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付も不要になるため、大きなメリットがでてきます。

しかしながら、規制を無視して廃棄物を有価物として取り扱うことは違法となりますので、正しく判断する必要があります。今回は、有価物とは何か、どのような基準で判断すべきなのか説明したいと思います。

有価物とは何か?

世の中のモノは、有価物と廃棄物に分かれます。すなわち、廃棄物に該当しないと判断されるものは有価物ということになります。そのため、廃棄物に該当するかどうかが判断の分かれ目となります。

廃棄物処理法においては適用範囲が廃棄物のみとなりますので、有価物の定義は明確にされていませんが、廃棄物については以下の通り定義されています。

廃棄物の定義(廃棄物処理法第2条第1項

「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体、その他の汚物または不要物であって、固形状または液状のものをいう。

廃棄物処理法の対象外(環境省通知 環整第43号

・気体

・放射性物質及びこれによって汚染された物 ※自己由来によって放射性物質に汚染されたもののうち、汚染レベルが8,000ベクレル以下のものは対象になる。

・港湾・河川等の浚渫(しゅんせつ)に伴って生じる土砂その他これに類するもの

・漁業活動に伴って漁網にかかった水産動植物等であって、漁業活動を行なった現場付近において排出したもの

・土砂および専ら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの

廃棄物処理法は固形状および液状の廃棄物に対しての規制であり、気体については適用されません。

※放射性物質で汚染された廃棄物も廃棄物処理法は適用されず、「放射性物質汚染対処特措法」によって規制されます。

廃棄物 or 有価物:判断の基準は?

有価物とは上記の廃棄物定義にあてはまらず、他人に有償で売却できるような価値のあるものを指します。

しかしながら、この判断基準では解釈が曖昧になってしまうため、他の要素と合わせて判断する必要があります。

ここで重要となるのが、客観的要素だけでは判断できない、主観的な要素も含め、複数の要素を組み合わせて総合的に判断する「総合判断説」という考え方です。

総合判断説とは

有価物に該当するかどうかを、「①物の性状」「②排出の状況」「③通常の取り扱い形態」「④取引価値の有無」「⑤占有者の意志」の5項目を見て総合的に判断することで、通知や最高裁判所の判決で支持されている考え方です。
判断基準
その内容
①物の性状 品質が利用用途に合っており、かつ飛散や流出、悪臭等がないか
②排出の状況 計画的に排出されており、適切な保管・品質管理がされているか。
③通常の取扱い形態 製品として市場が成立しているか。
④取引価値の有無 受け取る側に対し、有償で引き渡されているか。
⑤占有者の意思 占有者に適切な利用、または他人に有償で引き渡す意思があるか。

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有価物であると判断するには?

有価物であると主張することを「有価物抗弁」といいますが、有価物として判断されるには、他人に有償で売却できるような価値があることや、総合判断説5項目の内容を担保するための証明やエビデンスが必要になります。

判断の事例

上記5項目のうち、すべてにおいて有価物と判断されなくても有価物になる場合もあれば、そうでない場合もあるので注意が必要です。あくまで「総合的な判断」が必要ということになります。

たとえば不要になったものを業者が無償で引き取った場合、「有償で売却することができない」と判断され、廃棄物に該当します。

廃棄物に関する判例で重要な例として「おから事件」という判例があり、多くの参考にされています。

おから事件判決・・・最高裁判所 平成11年3月10日第二小法廷決定

豆腐を作るために大量に排出される大豆のしぼりかす「おから」を、都道府県の許可なくお金を受け取って引き取っていた業者が、産業廃棄物収集運搬業および処理業の無許可営業として検挙されました。

おからはスーパーなどでも多く販売されており、有価物ととらえることもできそうであり、なぜ廃棄物に該当するのか分かりにくいです。しかしながら、腐敗しやすく悪臭を放ちやすい(総合判断説①:物の性状)、多くの豆腐工場が廃棄物として排出している実態、本件では処理料金が支払われていた(有償で売却されていなかった)ことなどから、最高裁は豆腐製造工場から排出される副産物である「おから」が産業廃棄物であると判断しました。

そして、無許可でおからを受け入れていた業者は、産業廃棄物の無許可営業罪に該当するとされました。

一般的に廃棄物とされる物を排出者が廃棄物でないと言っている場合や、形式的に有価物となる場合であっても、廃棄物とみなされ、廃棄物処理法の適用を受けることになります。

廃棄物処理法の適用を受けた場合、法令に従っていない場合は違反となってしまい罰則を受けることになりますので、しっかりと有価物抗弁することが難しい場合は、初めから「廃棄物」として取り扱うほうが良いかもしれません。

本記事について

廃棄物処理法は、ただでさえ解釈が難しいのに加え、改正などによってさらに難解になっています。本記事を廃棄物管理担当者として従事する皆様の実務にお役立ちいただけますと幸いです。※こちらをクリックいただけますと、記事一覧がご覧いただけます。

ただし、都道府県によっては条例や規則、指針などを上乗せ・横出し制定している場合がありますので、自治体担当課等に確認を取ったうえで、最終的な判断を行うようにしてください。

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