フォークリフトの事故は重篤なものが多い|対策についても解説

フォークリフトの事故は重篤なものが多い|対策についても解説

フォークリフトは、おもに重量物の運搬に利用する機器で、車体自体の重量も大きいことから、重篤な事故や災害が発生する可能性の高い業務用車両になります。

中でも、倉庫における運搬業務など頻繁にフォークリフトを使用するような現場においては、フォークリフトに関わる事故は代表的な労災です。

フォークリフトの頻繁な利用がある場所においても、できる限り労災を防ぎ、安全な作業環境をつくるためには、日ごろからの仕組みづくり・注意喚起や教育が重要になります。

フォークリフトによる事故の種類や、事故を防ぐための対策について詳しく解説します。

フォークリフト作業で生じる重大事故の件数

フォークリフト労働災害件数は、年間2000件前後で推移していますが、フォークリフト作業に起因する重大事故のうち、最も重篤なのは死亡事故です。

フォークリフト労働災害における年間の死亡者数は、約20~40人程で推移しています。また死傷者(亡くなった人と怪我を負った人が混在している数)だと、年間2000人程で推移しています。

死亡事故は絶対に起こさないようにしなければなりませんが、過去の事例が社内に存在しない場合は、根本的な防止対策を練るのが難しい場合もあるでしょう。

参照:http://www.jiva.or.jp/pdf/23_SafetyDay_1-1.pdf

フォークリフト作業における死亡事故で多い原因


フォークリフト作業での死亡事故に多い原因は、以下のようなものがあります。


  • 墜落・転落
  • はさまれ・巻き込まれ
  • 転倒
  • 激突

それぞれ詳しく見ていきましょう。

墜落・転落

死亡事故の原因うち、最も多いと言われるのが墜落・転落になります。フォークリフトごとに墜落・転落したり、荷台から墜落・転落したりする事故です。

墜落・転落による死亡は、死亡事故の中でも特に高い比率となっており、多くはフォークリフトの用途外使用に起因するものです。

例えばフォークリフトのフォーク(爪)上に人を乗せて作業を行った結果、作業員が墜落して死亡したケースなどが見られます。他にも、パレット上に作業員を乗せてフォークリフトで持ちあげて高所作業をした結果、転落によって死亡した事故もあります。

墜落・転落事故を防ぐためには用途外使用を徹底して禁止し、作業員が高所から転落する恐れがある場合は、防止措置を講じる必要があるでしょう。また、重篤な墜落・転落事故を防ぐために、安全に十分配慮した作業計画の作成が求められます。

フォークリフトの用途外使用については、法令により禁止されています。


労働安全衛生規則

第 151 条の 13 フォークリフト等の車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、運転席以外の箇所に 労働者を乗せてはならない。

第 151 条の 14 事業者は、車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ、労働者の昇降等当該車両系荷役運搬機械 の主たる用途以外の用途に使用してはならない。


はさまれ・巻き込まれ

死亡事故の原因として、墜落・転落とともに多いのが、はさまれ・巻き込まれです。

過去の事例を見ると、多くのケースは作業員の注意不足や誤操作に起因するものです。また無資格者がフォークリフトを操作して発生しているケースも多くみられます。

例えば、無資格者が運転中、フォークリフトを前進させるつもりはなかったが、操作を間違えて前進させてしまい、作業していた別のスタッフがフォークリフトと停車中の貨物自動車の間に挟まれて死亡した事例があります。

無資格者によるフォークリフト操作は絶対にさせないよう、事業所としての体制や仕組みづくりを講じておく必要があります。

また、運転手は運転席から身を乗り出さないようにするなどの運転手側の安全意識と、フォークリフトの周囲にいる作業者や歩行者も、事故を防ぐ認識を常に持っておく必要があるでしょう。。

他にも、安全装置付きの車両を導入する等、設備面での対策も有効です。 フォークリフトの無資格運転に関しては、法令に以下の通り定められています。


労働安全衛生法

第 61 条 事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有するものでなければ、当該業務に就かせてはならない。

第 61 条 3 第一項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。

転倒

フォークリフトがバランスを崩して転倒することにより、下敷きとなったりして死亡する事故です。 急カーブやスリップによってフォークリフトが横転したり、脱輪によってフォークリフトが傾いた結果、運転席から投げ出されたり、といったケースになります。

作業エリアにおける制限速度厳守の徹底や、正しい運転技術の習得・実践が重要になります。

激突

作業中や歩行中の作業者がフォークリフトに轢かれたことによる死亡事故も多くみられるケースです。

フォークリフトは、荷を積んだ場合に前方視界の確保が難しくなるため、フォークリフトを後進させている時の事故だけでなく、前進中の激突事故も多いという傾向があります。

そのため、フォークリフトの進路となる範囲に、人が立ち入って作業していたり歩行していたことが多くの事故の原因となっています。

対策として、あらかじめ人とフォークリフトの走行範囲を区分けしておくこと、進行方向の安全確認の徹底、前方視界が悪い場合は誘導者をつけるなどの措置が有効です。

また、作業エリア内に積み重ねている資材の高さを低くすれば、視界が良好な環境を確保でき、重大事故防止に効果があります。 

法令では、以下のとおり定められています。

労働安全衛生規則

第 515 条の 7 運転中の車両系荷役運搬機械等又はその荷に接触することにより労働者に危険が生じるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させるときは、この限りではない。

 

 

フォークリフトの事故の原因

フォークリフトによる事故の原因は、ほとんどがヒューマンエラー、いわゆる人的ミスによるものといっても過言ではありません。では、どういったものがあるのか解説していきます。

前方(後方)不注意

フォークリフトの事故は、前後や左右の安全確認をしていれば防げたケースも多く見られます。そのため、前に進むときや後ろへ後退する際の指差安全確認はとても重要です。停止している状態からフォークリフトが動き出す際に、指差による安全確認を徹底するよう全体に周知する必要があるでしょう。

 

点検や整備不足

正しい運転方法や安全確認ができていても、走行装置や荷役装置などに異常があればトラブルが発生する可能性があります。フォークリフトに乗る前は、点検・整備を済ませ、車両の安全確認を行いましょう。

特に長期間メンテナンスが行われていないフォークリフトを動かしたり、異音や異臭がしているのにそのままにしたりしていると、重大な不具合や事故が発生するリスクが高まります。

誤ったパレットの積み方

本来の作業手順を省略してパレットを積んだり、作業効率を上げようと荷物を不安定に積んでしまったりすることで、事故が発生する場合もあります。

製品の形状や重量を十分考えて、フォークリフトが動くときや旋回するときでも荷崩れしない安全な積み方を常に心がけましょう。常に安全を優先してパレットを積む必要があります。

フォークリフトの作業範囲が明確ではない

フォークリフトが走行できる領域と作業者の歩行領域の境目が曖昧であったり無かったりすることで、同じスペースや動線を車両と人が共用し、接触事故に至るケースがあります。

特にフォークリフトの爪は車体から長く突き出ているため、作業者からも見えにくく、ほかの作業者の体に接触しやすいので、フォークリフトを旋回させるときに爪がどのように動くかを考えながら操作しなければいけません。

現場は常に全員が作業範囲を明確に把握できるよう工夫しましょう。

フォークリフトの事故を減らすための対策

フォークリフトによる事故を減らすためには、次のような対策が有効です。

  • 指差し確認・指差し呼称の徹底
  • フォークリフト専用道路を作る
  • 安全な運転と積み方の徹底
  • 危険予知の研修の導入
  • 安全ツールの導入

指差し確認・指差し呼称の徹底

指差し確認や指差し呼称を徹底して行うようにしましょう。フォークリフトが停止している状態から動き出す際には必ず確認作業をするよう義務付けます。安全対策をルール化し、作業する人への習慣づけをすることが重要です。

フォークリフト専用道路を作る

フォークリフト専用道路を作ることで、フォークリフトが走行するエリアと人が作業したり立ち入ったりするエリアの区域を明確に分けられます。旋回する際にフォークリフトの爪の先や後部がどのような動きをするか計算したうえで、フォークリフトの稼働区域を決めてください。

誰が見ても分かりやすいよう、境界線に目立つ色のラインテープを貼るなどするとよいでしょう。どうしても工場内でフォークリフトと人が混在しなければならないエリアには、通路付近にパレットを置かず、見通しがいい配置にしておきましょう。

安全な運転と積み方の徹底

フォークリフトを扱う人全員が、安全な運転や荷物の積み方などを守れるようにしましょう。当然、フォークリフト免許を取得する際に、安全な乗り方と積み方は勉強しているはずですが、現場での作業となると効率やスピードを優先して「軽い荷物だから」「少しの間だけだから」と、違法な使い方や危険な荷物の積み方をしてしまうことは少なくありません。

フォークリフトを本来の作業目的以外に使用する事は、労基法上で禁止されています。普段から定期的にパトロールするなど安全性をチェックするようにしましょう。

危険予知の研修の導入

作業者が危険予知トレーニングを行えるよう体制を整えましょう。危険予知トレーニングでは、フォークリフト作業を行ううえでの危険な場面や環境を改めて認識できます。危険に関する問題点を共有することで、安全に対する意識を高めて無事故で作業できる職場環境作りに役立ちます。

作業員全員が、作業ルールや構内ルールを理解し実行できるようにすることが大切です。

安全ツールの導入

安全にフォークリフトで作業できるようITツールの導入を検討してもよいでしょう。フォークリフト専用のドライブレコーダーを取り付ければ、万が一事故が起きた場合に原因を究明し、再発防止に役立てられます。

また、フォークリフトが稼働しているときのモニタリングや、危険運転がされたときに管理者への自動報告などできるサービスもあります。そのほかにも、フォークリフトでスピードを出しすぎたときに、車両の赤色灯が点灯して運転手や周囲の人に知らせるスピード警告装置もおすすめです。

フォークリフトの事故を防ぐために注意喚起の徹底を

フォークリフトによる災害を防ぐためには、作業環境・車両といった設備面での安全対策と、教育や注意喚起といった設備以外の面での安全対策の両方が必要になります。

教育だけにとどまらず、教育内容を日々の作業で実践・維持できるよう注意喚起のための仕組みづくり・環境づくりも重要です。

例えば、毎日朝礼でヒヤリハット事例を共有したうえで予防のための注意喚起を再確認するようにしたり、安全の注意を促す標識・表示を作業場内に提示する等、定期的に作業員が教育内容を再認識できるような仕組みがあることが望ましいでしょう。

当店では、フォークリフト作業の安全確保を目的とした商品も取り扱っていますので、災害防止のためにご活用いただけますと幸いです(フォークリフト関連商品はこちらをクリック)。




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