免許(運転技能講習)や色々なメンテナンスが必要なフォークリフトと比べると、ハンドリフトは免許不要で、誰でも手押しで操作しながら荷物を移動させたり運んだりすることができて小回りが利きます。フォークリフトだと車両式になるので正確なパレット移動には技術を要しますが、ハンドリフトだと正確に移動させることも簡単です。小回りの利かない狭い場所にて特に力を発揮します。
目次
ハンドリフトの種類
ハンドリフトには、手動のものと電動のものがあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。手動タイプ
手動のハンドリフトは、一般的にハンドリフトと呼ばれているものを指し、使う場合、ハンドルを上下に動かすなど手動で操作を行います。構造は、とてもシンプルで操作しやすく、コストも抑えられる点がメリットといえるでしょう。ただし、基本的にすべての操作を人の力で行わなければいけないため、作業には力が必要です。また、持ち上げられる荷物の重さにも制限がある点などはデメリットです。
電動タイプ
電動ハンドリフトは、電動でパレットを持ち上げて作業ができるハンドリフトです。作業者は自力でハンドルを上下させる必要がないため、力が弱い人や女性でも扱いやすい点がメリットです。また、手動のハンドリフトよりも電気の力でより重たい荷物を持ち上げられるため、重量物を扱いたい場合には電動ハンドリフトの方が便利といえるでしょう。しかし、手動ハンドリフトよりも価格が高い、使用する際には電源が必要などのデメリットもあります。
ハンドリフトの使い方
ハンドリフトの具体的な使い方を詳しく見ていきましょう。ハンドリフトは、メーカーが違っても操作方法はほとんど変わりません。ただし、レバーの位置だけは、メーカーによって異なる場合があるため、説明書や製品の情報を確認しましょう。
爪をパレットに差し込むハンドリフトには2本の爪がついており、これをパレットに差し込みます。ツメが上がった状態ではパレットに差せないので爪を下降させた状態にします。
フォークを差し込む際には、あまり奥まで入れてしまうとフォークが抜けなくなる可能性があります。また、パレットが破損するリスクも高まるため入れすぎないようにしましょう。
パレットに爪を差すときは、ある程度勢いを付けた方が上手く差せる場合があります。ハンドリフトとパレットのサイズ規格が完全に合っていない場合は、勢いをつけて差しましょう。
それでも、上手く差せないときは、若干爪を上昇させて差すとよいでしょう。爪を上昇させてもできない場合は、上昇や下降を繰り返して、パレットの高さに合わせてみてください。パレットとは、荷物をまとめて載せる台のことで、フォークを差し込むための隙間があります。パレットの上に荷物を載せることで、フォークリフトやハンドリフトによる運搬作業が可能になります。単に積載する座布団の役割をする平パレットのほか、側面に板や網が取り付けられた折り畳み式のボックスパレットなどがあります。
爪を持ち上げ、パレットを浮かす
ハンドルを上下させるとフォークが動きます。フォークを上げる場合は、ハンドルに付いているレバーを下げて手前に引くようにして上昇ポジションに移動させるとフォークが差し込まれているパレットを持ち上げられます。この上昇ポジションは、製品によって違う場合があります。不明な場合はハンドルを動かして上昇するようならば、そこが上昇ポジションのレバー位置です。
パレットを動かす
ハンドリフトは前に押して動かすと、ハンドルが左右に取られてグラグラしてしまうので、基本的に手前に引いて動かします。レバーを中央の位置にして、ハンドルを手前に引くようにしてパレットを移動させましょう。ハンドリフトを押して移動しようとすると方向が安定しにくく、動かしづらくなります。また、前が見にくいためほかの作業員や荷物などにぶつかるリスクも高まります。必ず、ハンドリフトはハンドルを手前に引いて動かすようにしましょう。
具体的には、レバーをニュートラルポジションにし、パレットを慎重に引きます。UPポジションでも移動させることは可能ですが、ニュートラルにするとハンドリングが楽です。
パレットは勢いを付けて引くと、積まれている荷物が崩れてしまう場合があるため、ゆっくりと引きましょう。基本的にハンドリフトを移動させるときは、押すのではなく引きながら移動してください。目的の位置まできたら方向を調節し、最後に押してパレットを移動させます。
非常事態で急ブレーキをするときは、最初に爪を下降させたときと同様にハンドルレバーを複数回引きましょう。複数回引くとパレットが地面と接触して移動を止められます。
ただし、この急ブレーキの方法は、ラップなしで荷物を高めに積んでいると荷崩れを起こしてしまうので、どうしても危機を回避しなければいけないときに使用するものと覚えておいてください。
ハンドリフトは、引いて移動しているときは、逆方向に押して止めようとしても急には止まりません。移動する方向に人や物がないかを常に確認しながら操作することがとても大切です。
パレットを下げて荷物を抜く
荷物を置く際は、少し押したりして位置を調整し、爪を下ろしてパレットから爪を抜きます。フォークを下げるときは、ハンドルレバーを握るとフォークが下がり、パレットを下ろせます。レバーを強く握り過ぎると、フォークが一気に下がってしまうため注意してください。。ゆっくりと力を入れながらフォークを下ろしたら、パレットからフォークを抜きましょう。ハンドリフトの手動と電動の比較
手動の場合、爪を上げるためにはハンドルを何度か上下させて油圧で持ち上げるタイプが一般的です。爪を下げる際はレバー部分を握れば油圧が開放されて爪が下ります。
一方で電動式の場合は、電動で爪を上げ下げすることが可能で、移動もバッテリーの力で駆動するので作業が非常に楽になります。
最大積載量は1500kgのものが最も一般的ですが、700kg積から5トン積までさまざまなタイプが用意されています。 数百キロの荷物を運ぶことが多い場合は、手動よりも電動のほうが作業効率が圧倒的に高くなります。
荷物の運搬・保管環境に応じて多種多様なハンドリフトが販売されているので、使用状況に合ったものを選ぶと良いでしょう。
ハンドリフトのメリット
ハンドリフトのメリットには、次のようなものがあります。
- フォークリフトよりも安い
- 免許がいらない
- 高齢者や女性でも操作できる
- 重い荷物を簡単に運搬できる
- 狭い道も通りやすい
- 微調整しやすい
詳しく見ていきましょう。
フォークリフトよりも安い
フォークリフトは、ハンドリフトよりも重たい物も持ち上げられますが、車両となるため購入費用は数百万円になります。中古のフォークリフトでも、百万円以上のコストがかかるでしょう。しかし、ハンドリフトは本体がシンプルなので、フォークリフトよりも安く購入できます。コストを抑えて導入するならハンドリフトがおすすめです。
免許がいらない
フォークリフトの場合、特殊自動車となるため、公道をフォークリフトで走行するときは車体のサイズや最高速度に対応している運転免許が必要です。また、作業を行う際は、フォークリフト運転技能講習などの講習を修了し、資格を取得しなければいけません。ハンドリフトなら、免許取得は必要はありません。使い方を理解していれば誰でも扱える点もメリットでしょう。
高齢者や女性でも操作できる
ハンドリフトは、免許不要で操作ができるため、高齢者や女性など力のない方が、重い荷物を運べる点もメリットです。ハンドルを動かすためにある程度の力は必要ですが、ハンドリフトなら人力で持ち上げるのが難しい荷物でも運べるでしょう。
重い荷物を簡単に運搬できる
ハンドリフトはフォークリフトほど重いものを持ち上げられませんが、人の手で運ぶときとは比較できないほど重い荷物を効率良く運搬できます。パレットは多くの製品が詰まっているため、そのまま人の手で動かすことはできません。工場や倉庫などでの作業には、ハンドリフトは不可欠といえるでしょう。
狭い道も通りやすい
フォークリフトは、車両扱いのため車体が大きく、走行するときもそれなりのスピードが出ます。ハンドリフトは、フォークリフトよりも小型で構造がシンプルです。そのため、狭い道でも通りやすいという点もメリットでしょう。手動で細かい操作ができ、小回りが利きます。狭い場所や通路の多い倉庫での作業は、ハンドリフトの方が便利でしょう。
微調整しやすい
ハンドリフトは手動で操作するため、フォークリフトよりも細かい操作がしやすいというメリットがあります。フォークリフトは電動のため、重い荷物を持ち上げることは得意ですが、パレットを置く位置を微調整するなどの不得意です。フォークリフトに比べて、微調整がしやすい点はメリットだといえるでしょう。
ハンドリフトで運搬するときの注意点
ハンドリフトで運搬するときには、次のような点に注意しましょう。
パレットを破損させないように注意
ハンドリフトの爪の厚さがパレットの隙間に対して大きすぎると、そもそも爪をパレットに差し込めなかったり、無理に差し込んでパレットを破損させたり、爪を差し込んだものの抜けなくなったりするので注意しましょう。 また、ハンドリフトの爪の下部には車輪がついていますが、パレットの下部に車輪が乗り上げた状態で持ち上げると、パレットの下部が破損する場合があります。荷物のバランスを取る
ハンドリフトに荷物を積むときは、バランスに気を付けましょう。荷物のバランスが悪いと運搬している途中でバランスを崩して荷物が倒れてしまうリスクがあります。最初に荷物を載せる際にバランスよく積むようにし、荷物の重心が偏っているなと思ったら、偏りに合わせてフォークを差す位置を調整しましょう。
過積載に注意
ハンドリフトは種類によって耐荷重が決まっているため、それ以上の荷物を積み込み過ぎると持ち上げられなくなります。荷物を載せ過ぎないように注意しましょう。耐荷重を越えた荷物を積んで無理に動かそうとすると、ハンドリフトの爪が折れてしまう可能性もあります。事故や破損を防ぐためにも、ハンドリフトに積載できる荷重はきちんと守りましょう。
爪の上げすぎや下げすぎに注意
運搬の際、爪を高く上げすぎると重心が高くなり不安定になります。一方で、運搬の際に爪を下げすぎると、軋んだパレットが地面と擦ってしまったりします。いずれも運搬がスムーズに行かなかったり転倒したりする恐れがあるので、丁度よい高さまで爪を上げたうえで運搬を行いましょう。爪はしっかりと刺す
パレットへの爪の差込が不十分だと、荷物が不安定になって荷崩れの原因になります。また、複数のパレットを一緒に持ち上げることは避けましょう。複数のパレットが敷き詰められた上に荷物がある場合、パレットに爪を差し込む際に、奥にある別のパレットまで差し込んでしまうこともあるので、注意しましょう。引いて動かす
小回りが利くハンドリフトですが、前に押して移動しようとするとハンドルが取られやすく真っ直ぐに進めません。基本的にハンドリフトは、引いて移動するようにしましょう。前に押すのは、パレットを置くときだけです。移動の際は、壁などに挟まれないように
上述のとおり、ハンドリフトは基本的に引いて動かしますが、重量物を移動させるときは慣性の力が働いてうまく停止できず壁などに挟まってしまう可能性があります。 緊急停止機能がついているタイプが大半ですが、購入前に念のため非常時の機能について確認しておくとよいでしょう。また、ハンドリフトを走行させたり荷物を運搬させたりするときの走行速度も注意を払いましょう。スピードが速過ぎると、振動で荷崩れを起こしたり障害物に気付かなかったりして危険です。荷物を運搬する際にはゆっくり走って、慎重に行いましょう。
一気に下さない
木製のパレットには使わない 多くのハンドリフトは、木製のパレットに対応していません。木製のパレットを持ち上げようとするとフォークが折れて、荷物が落下するリスクがあるため、使用前にハンドリフトが対応しているパレットについて確認しましょう。ハンドリフトを使用する際に必ず注意すること
安全に作業を行うために、ハンドリフトを使用する際には必ず次のことに注意しましょう。
必ず安全靴を履く
パレットを引いているときに、勢い余ってローラー部分で足を引いてしまうリスクがあるため、必ず安全靴を使用しましょう。死角がある場合は極力押さない
パレットに荷物を高く積むと、死角が出来ます。死角がある状態で押しながら移動するのは事故を起こす可能性があり危険です。極力引いて移動するようにしましょう。後方確認を行う
引きながら移動するときに後方に障害物があると、万が一転倒した場合にとても危険です。必ず後方を目視しながら、ハンドルから手を離さないようにして慎重に引きましょう。安全確認を行う
作業する際、人が近くにいるようなら必ず安全確認を行いましょう。ハンドリフトを手で動かしていると、重量への意識が薄くなりがちです。しかし、人が何百キロの荷物と壁に挟まれれば大事故になります。人が近くに来たときはまず減速し、作業することを忘れないようにしましょう。ハンドリフトを購入する際のチェックポイント
ハンドリフトを購入する際は、以下の点をチェックしてみましょう。
対応重量はどのくらいか
ハンドリフトの対応重量を確認しましょう。耐荷重を超える重さの荷物を載せようとすると、持ち上げられなかったり爪が折れて荷物を落としたりする可能性があります。扱う荷物の重さを考えて、対応しているハンドリフトを選ぶようにしましょう。普段扱っている荷物よりも、少し対応重量が多いハンドリフトなら安心です。
フォークの形と高さをチェックする
ハンドリフトは製品によってフォークの形が異なるため、普段扱うパレットに合うフォークの形状がかどうかを確認しましょう。また、ハンドリフトのフォークがどのくらいの高さまで上がるのかもチェックしてください。ハンドリフトによってフォークが上昇する高さも違いがあります。動かしたい荷物にフォークが届かなければ意味がないので、 普段高い場所に荷物を置いていて運搬する場合は、荷物を置いている棚の高さにフォークが届くハンドリフトを選ぶようにしましょう。
使用場所に合うものを選ぶ
手動のハンドリフトは狭い通路の多い工場や倉庫でも使えますが、傾斜の多い場所では扱いづらくなります。基本的に手動のハンドリフトは平地で使うことを考えて作られているため、傾斜が多い場所なら電動のハンドリフトやフォークリフトを選ぶなど、使用場所に合うハンドリフトを選びましょう。
中古品は状態をよく確認する
中古のハンドリフトを購入する場合は、上記のポイント以外にタイヤやフレーム、油圧シリンダーなども確認しましょう。中古品の中には、タイヤがすり減っているものもあります。ハンドリフトを動かしたときに、スムーズにタイヤが動くかどうか必ず確認してください。また、フレームが劣化して曲がっていたり亀裂が入っていたりする可能性もあります。油圧シリンダーも劣化による損傷でオイルが漏れているかもしれません。
これらのポイントをチェックしてから、購入を検討しましょう。
ハンドリフトの相場価格
ハンドフォークリフトの値段は、手動タイプと電動タイプで異なります。また、中古品の方が安く購入できます。
手動のハンドリフト |
3~5万円程度 |
電動のハンドリフト |
10万円以上 |
中古のハンドリフト |
1~2万円程度 |
ハンドリフトについてのよくあるQ&A
フォークがパレットに入らない
パレットの規格とハンドリフトの規格があっているか確認しましょう。合っているのであれば、ツメの高さを調節してみてください。最下段になっているなら少し上げたり下げたりして調節してみましょう。それでも入らない場合は、少し勢いを付けて差してみてください。耐荷重以内の荷物なのに重くて引けない
ハンドリフトが劣化している可能性があるため、油圧やローラーの点検をしてみてください。一時的な対処法として、KURE 5-56などの潤滑油をローラーに使用すると移動がスムーズになることがあります。移動しているときにパレットが傾いてしまう
片側に荷物の重量が寄ってしまっているか、フォークの差す位置が左右どちらかに寄っていないか確認しましょう。ツメが奥まで差せない位置にパレットがある
パレットのすぐ奥に何か物が置いてあって奥までフォークが差せない場合は、フォークを少しだけ差した状態で左右に振りながらパレットを徐々に手前に引いてみましょう。かなり力とコツが必要です。左右に振るときは必ず荷物が崩れないように固定し、左右に振っても安全な場所で行ってください。決して無理をせず、危険だと判断した場合は電動のフォークリフトを使いましょう。
ハンドリフトの注意点などに気をつけて正しく使いましょう
ハンドリフトを使うと、女性や高齢者でも重い荷物を簡単に運搬できるようになるため、とても便利ですが、扱うためのコツや注意が大いに必要です。今回ご紹介したハンドリフトの使い方やハンドリフトを使用する際の注意点などを参考にして、ハンドリフトの正しい使い方を身につけましょう。