産業廃棄物を収集運搬する際は、産廃の内容物に合わせて適した産廃トラックを利用します。産業廃棄物に関しては、廃棄物処理法によって運搬方法から容器などに至るまで細かい規定があり、それに従って産廃処理を行わなければいけません。
本記事では、産廃トラックや容器の種類について詳しく紹介します。また、産廃トラックに関する法令についても解説していきます。
目次
産廃トラックとは

産廃トラックは、産業廃棄物収集運搬車両のことで、産業廃棄物を収集・運搬するために使われるトラックを指します。
産廃トラックには 、廃棄物の形状や性質に応じていくつかの種類があります。
産廃トラックの種類

産廃トラックには、次のようなものがあります。
- ダンプ車
- パッカー車
- アームロール車
- クレーン車
- コンテナ車
- バキューム車
- タンクローリー車
- チップ車
ダンプ車
ダンプ車は正式にはダンプトラックと呼ばれ、油圧シリンダーで荷台を傾けながら積荷を降ろせる車両のことです。
土砂などの固形物を運搬するときに適した車両で、液状の産業廃棄物以外であれば基本的にどのような積荷でも運べます。車両の構造もシンプルで、運送コストが安いのも特徴です。ただし、密封性が低く液状の産業廃棄物の収集運搬はできないこと、積載する際に産業廃棄物が飛散したり流出したりするリスクがあることがデメリットです。
ダンプ車はビルや家屋の解体で出るコンクリート片やがれき、廃プラスチックなどの産業廃棄物の運搬に使われます。そのほかにも木くず、金属くず、紙くず、燃え殻、ガラスくずなどさまざまな産業廃棄物の運搬が可能です。
積載量はダンプ車の種類によって異なるため、運搬する廃棄物の大きさや重量に応じて適切なサイズの車両を選択する必要があります。また、ダンプ車は産業廃棄物以外のものを運搬するときにも使用しますが、運ぶものによって積載量に注意しなければいけません。
パッカー車
パッカー車とは、ゴミを取り込む部分に圧縮装置が設置されている車両で、ゴミ収集車と呼ばれている車両のことです。正式には塵芥(じんかい)車という名称があり、パッカー車は車体の後ろからゴミを回収し、圧縮してから運搬します。
圧縮して運ぶため、多くの産業廃棄物を運べるのが特徴です。特に圧縮が必要な廃プラスチックの収集には、パッカー車は欠かせない車両といえるでしょう。
パッカー車はゴミ収集車としてだけではなく、各自治体や建設業、造園業、工場などでも使用されています。また、パッカー車の中には汚水タンク付きの車両もあり、水分を含む廃棄物の処理を安全に、そして衛生的に運べる点も特徴です。パッカー車は、さまざまな種類の廃棄物に対応できる汎用性がある車両です。
アームロール車
アームロール車は、荷台が簡単に着脱できる車両です。アーム(クレーンアーム)を備えているため、アームでゴミ箱を持ち上げてトラックの荷台に産業廃棄物を簡単に投入したりコンテナを積み下ろしたりできます。
荷台によって液体や固体など形の異なる産業廃棄物の種類を選択できるため、さまざまなニーズに対応でき、需要の高い産廃トラックです。アームロール車は、建設現場や事業所などで排出された産業廃棄物の回収時によく使われます。
現場にコンテナだけを置いて、産業廃棄物がいっぱいになったらアームロール車でコンテナごと運搬し、空のコンテナと交換するやり方が一般的です。
クレーン車
クレーン車は荷物をつり上げて、水平に運搬する機械を搭載したトラックで、鉄骨や重量物などを安全に効率よく運べる特徴があります。産業廃棄物の収集や運搬に使う際は、金属加工くず、鉄骨鉄筋くず、足場パイプ、足場材、木造解体材などの大きなものをワイヤーでまとめてつり上げて運搬車両に乗せられます。
クレーン車を操作する場合は、持ち上げる荷物の重さによって操縦者が所持するべき資格が異なります。荷物の重さが0.5トン未満の場合は、講習を受けることでクレーン車の運転が可能です。
1〜5トンの小型移動式クレーン車の操縦には、運転技能講習の修了が必要です。さらに、5トン以上のクレーンを使用する場合は、運転技能講習修了と移動式クレーン運転士の資格がなければいけません。
コンテナ車
コンテナ車は、脱着装置付きコンテナ専用車のことで荷台がコンテナになっているトラックです。
コンテナは脱着ができ、金属くず、ガラスくず、繊維くず、がれき、廃プラスチックなどを収集するだけではなく保管も可能です。コンテナに一旦産業廃棄物を保管して、一定量になってから処理できるためコストを抑えて収集・処理ができます。
腐食することのない産業廃棄物なら、大きさや種類に関係なく収集できます。
バキューム車
バキューム車は汚泥吸引車とも呼ばれ、トラックの荷台部分にタンクを搭載し、真空ポンプと吸引ホースの気圧の力を使って液体の汚物を吸い上げて運搬する車両です。
流動体や粘性半流動体、沈殿物などもホースを使って吸い込んで取り込めます。汲み取り式トイレの糞尿や浄化槽の汚水の回収などに使われるほか、産業廃棄物の一種、汚泥を収集する際にもバキューム車が活用されます。
タンクローリー車
一般的に液体の産業廃棄物を収集運搬する場合、ドラム缶などに入れて輸送しますが、ドラム缶に入らない量の液体の収集や運搬にはタンクローリー車が使われます。
たとえば、産業廃棄物に指定されている廃油や汚泥、廃酸や廃アルカリなどを運ぶのはタンクローリー車です。
チップ車
チップ車とは、荷台の枠がオープントップより高くなっている車両で、深ダンプと呼ばれることもある車両です。おがくずや木片などのウッドチップの運搬に使われます。
上からでもチップを入れやすいよう、荷台には天井がありませんが、ウッドチップの飛散を防ぐために屋根部分にネットが備え付けられていたり、開閉式の屋根がついているチップ車もあります。
産廃容器の種類

産業廃棄物を入れる容器も、形状や大きさに合わせてさまざまなものがあります。
- ドラム缶
- プラスチックドラム
- フレキシブルコンテナ
- コンテナ車両を利用したコンテナ
- 石油缶
- 感染性廃棄物容器
ドラム缶
産業廃棄物を運搬する容器としてよく使用されているのがドラム缶です。ドラム缶には、ふた付きのオープンドラム缶とクローズドラム缶の2種類があります。ふた付きオープンドラム缶は、飛散防止が可能で固形物や粉末状の産業廃棄物を入れる際に使われます。
液状の産業廃棄物を収集運搬する際に使われるクローズドラム缶は、充填口から液状の廃棄物を入れるため、中の液体が漏れない仕組みです。
ドラム缶はコストが安く、大きな廃棄物や感染性廃棄物でなければ固形、液体問わず幅広い産業廃棄物に使える点がメリットです。
プラスチックドラム
オープンドラムやクローズドラムでは運べない、廃酸や廃アルカリなど金属を腐食させる廃棄物を運ぶ際に使われるのがプラスチックドラムです。
プラスチックドラムは、鋼製のドラム缶とは異なり内部がプラスチック素材で作られています。そのため、サビにくく軽量、液体でも粉末でもどちらにも使用でき、耐薬品性に優れている点が大きな特徴です。
フレキシブルコンテナ
持ち手がついたバッグ型で丸や四角形などがあるフレキシブルコンテナバッグは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの化学繊維で作られています。フレコンバックやフレコンと呼ばれることもあり、主に農業や工業用に使用される袋型の大型容器です。
フレキシブルコンテナはコストも安く、柔軟性のある素材を使っているため、紙くず、木くず、ゴムくず、がれき類、燃え殻などのほか、肥料や土砂、肥料を作る工程で発生した廃棄物など固形の幅広い産業廃棄物に対応できます。
フレキシブルコンテナを産廃トラックに乗せるときは、フォークリフトもしくはまたは手作業で行います。
コンテナ車両を利用したコンテナ
コンテナ車についているコンテナも産廃容器の一つです。コンテナの中に産業廃棄物を集めて、一定量になったらコンテナ車両に乗せて処理します。コンテナは、産業廃棄物を一時保管する用途にも使われます。
石油缶
産業廃棄物の石油や、クリーニング溶剤を運搬する場合に使うのが石油缶です。ほかにも石油小口の輸送や販売にも使用される容器で、ブリキ製で容量は一斗(約18リットル)あります。
容器に移す際は、一斗缶から石油缶ベロを使用して移しますが、一斗缶の上部にふたが付いているものの場合は、石油缶ベロを使わなくても移行できます。
感染性廃棄物容器
感染性廃棄物とは、医療機関などから排出される産業廃棄物のことで、注射針や血液の付着したガーゼや包帯などです。ほかにもギプス用石膏、アンプル、手袋、レントゲンフィルムなども産業廃棄物です。
感染性廃棄物容器は、人へ感染する病原体が含まれていることもあるため、廃棄する際は直接、感染性廃棄物容器に入れなければいけません。また、一目で内容物が分かるよう感染性廃棄物容器にはバイオハザードマークを付けます。
産廃トラックの義務とは

産業廃棄物を収集運搬する車両には、法律によって車両の表示と書類の携帯が義務づけられています。
車両への表示
産業廃棄物を収集処理する際は、廃掃法施行令で定められた事項を車体の両側面に鮮明に表示しなければいけません。
定められた事項は、排出事業者が自ら運搬する場合と、委託された収集運搬業者が運搬する場合で異なります。
【排出事業者が自ら運搬する場合】
- 産業廃棄物を収集運搬している旨の表示
- 排出事業者名
【収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合】
- 産業廃棄物を収集運搬している旨の表示
- 収集運搬業者名
- 下6桁の許可番号
表示の仕方は、車体に直接プリントせずに事項を記載したマグネットシートなどを貼るだけでも問題ありません。ただし、見やすく鮮明であること、識別しやすい色の文字であることが必要です。
書類の携帯
産業廃棄物の収集運搬で携帯が義務付けられている書類も、排出事業者が自ら運搬する場合と、委託された収集運搬業者が運搬する場合で異なります。また、電子マニフェストを使用している場合の携帯しなければいけない書類も異なるため、運搬者によって必要な書類を用意しましょう。
【排出事業者が自ら運搬する場合】
- 排出事業者の氏名または名称および住所
- 運搬する産業廃棄物の種類および数量
- 運搬する産業廃棄物を積載した日
- 積載した事業場の名称、所在地および連絡先
- 運搬先の事業場の名称、所在地および連絡先
これらの情報はマニフェストにも記載されています。排出事業者が自らが車両を使って収集運搬する場合は、マニフェストを携帯しておいてもよいでしょう。
【収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合】
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)
- 産業廃棄物収集運搬業許可証の写し
委託を受けた収集運搬業者が電子マニフェストを使用して運搬する場合、上記2点に加えて、次のものを携帯しなければいけません。
以下の情報が記載された電子マニフェスト受渡確認票(電子情報でも可)
- 運搬する産業廃棄物の種類、数量
運搬する産業廃棄物を積載した日
積載した事業場の名称、連絡先
運搬先の事業場の名称、連絡先
その運搬を委託した者の氏名または名称
- 電子マニフェスト加入証の写し
- 産業廃棄物収集運搬業許可証の写し
産廃トラックには種類がある|規定に沿った使用を

産廃トラックには、収集する産業廃棄物の種類や形状に合う車両がさまざまあります。環境に配慮しながら、安全に処理するためにもっとも適した車両を選びましょう。
また、産廃トラックを使用する場合は、法令によって車両表示と書類の携帯が義務付けられているので忘れないようにしてください。