昨今、さまざまなメディアで聞くようになったSDGs(エス・ディー・ジーズ)という言葉。よく耳にするようになったとはいえ、いまいち内容がわからないし「何それ?」と言いにくい空気感があるとも聞きます。
最近国内で実施された市民アンケートでは、「全体のうち60%が名称も内容も知らない、名称と内容の両方を知っているのは13%にとどまっていた」という結果もでており、多くの人にとって日常的にはまだ浸透していない状況のようです。
この記事ではSDGsの概念を分かりやすく説明するとともに、日本の現状も紹介します。SDGsについて、いまいちよく分からないという方は是非ご参考ください。
改めて、SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称です。そのまま日本語にすると「持続可能な開発目標」となり、いまいち意味をつかみにくいかと思います。
Sustainable(サステナブル)とは大まかにいうと「環境や社会にやさしい」という意味になります。Development(デベロップメント)は「開発」という意味になりますので、Sustainable Developmentで「環境や社会にやさしい開発」ということになります。
もともとは、1980年代に国連で設立された「ブルントランド委員会」という組織が発表した報告書によって「Sustainable Development」という理念が定義され、世界に広まった経緯があります。 未来の世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすための開発していきましょう、という理念です。
「未来の世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく」と言っても、少し分かりにくいですよね。例を出してみましょう。
極端な例になりますが、今の世代で「紙が欲しい」というニーズがあり、それを満たすために木を切りまくってしまうと、未来の世代で木が無くなってしまい、木を使うようなニーズを満たす能力が制限されてしまうことになります。そうならないように、後の世代になっても持続が可能な開発を進めないといけないよね、ということです。
そのための目標(ゴール)を定義したのが、SDGs(エス・ディー・ジーズ)という理念になります。ちなみに国連のSDGs定義をそのまま記載すると、「貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指しましょう」となっています。
SDGsの具体的な目標
SDGsは2015年の国連サミットで採択されました。国連に加盟している193か国が、2016年1月から2030年までの15年間で達成するよう計画されています。
さて、SDGsの具体的な内容についてですが、17項目の大きな目標に分かれています。それぞれかいつまんで見ていきましょう。
まず1~3の目標ですが、人々が健康的に生きていくための基本的な要件を満たすためのものです。日本に住んでいると、これらの要件が満たされないのは遠い国のことのように感じられますが、実際は多くの課題があります。
例えば、日本の相対的貧困率は経済大国の中でも特に高いとされています。2016年に発表された「世界の貧困率」における日本の順位は上から14番目で、15.7%という数値になっています。これは先進国の中で中国やアメリカに次いで3番目の高さです(出典:厚生労働省)。
ちなみに、「絶対貧困」とは、生活を維持していくことが難しい状態を指します。一方で「相対貧困」とは、その国の生活水準や文化水準を下回る状態に陥っていることを指します。
目標1の「貧困をなくそう」に対して、日本はまだまだ課題があるということですね。
次に、4~6の目標ですが、人々が人間らしく生きるための要件になります。たとえば目標5は、男女間の格差をなくすことが目的ですが、世界経済フォーラム(WEF)が発表したジェンダー・ギャップ指数の2020年度版によると、日本は前年よりもランキングを11位落とし、調査対象となった153カ国のうち121位となりました。経済と政治では、日本での男女格差が依然として開いているのが現状であることが示されています。
さらに進んで、7~12の目標を見てみましょう。前述の目標よりも、だんだんとスケールが大きくなってきましたね。これらは先進国共通で国をあげて取り組んでいる内容になります。
さらに13~17の目標になると、もっとスケールが大きな内容となり、国単位のみではなく各国がまとまって推進していかなければならないレベルになっています。
SDGs目標を達成するための169個のターゲット
上記の17個の目標は、多くの人にとって分かりやすい内容になっているかと思います(余談ですが、ピコ太郎さんがこれらの目標をPPAPにして普及活動してましたね)。
でも、目標だけだとそれを達成するための行動が各々でバラバラになってしまいます。そのために、合計169個のターゲット(行動目標)が示されています。
また、上記ターゲットの進捗をレビューするための232個の指標を総務省が示しています(数が多いので全てをここで説明することはできませんが、興味のある方はこちらをご覧ください)。
要は、17個の目標>169個のターゲット>232個の指標という順で細分化されており、これを基準に皆で取り組んでいこうね、ということです。
例えば、目標4の「質の高い教育をみんなに」に対応するターゲットを抜粋すると、「2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。」というものがあります。
またそれを評価するための指標として、「(i)読解力、(ii)算数について、最低限の習熟度に達している次の子供や若者の割合(性別ごと)(a)2~3学年時、(b)小学校修了時、(c)中学校修了時」という項目が示されています。
つまり目標4を達成するためには、質の高い教育を提供するための行動が求められていて、達成したかどうかは読解力や算数の習熟度が一定の基準に達している小・中学生の割合で見ますよ、ということになります。
各国のSDGs取り組み状況は?
上記のような内容で、グローバルレベルで共通の指針が示されているわけですが、SDGsの進捗状況を報告して経験を共有したり、SDGsを目標ごとにレビューするハイレベル政治フォーラム(High-level Political Forum = HLPF)という場があります。
HLPFは毎年、国際連合の主要機関の一つである「経済社会理事会」のもとに開催されますが、4年に一度は、国連総会のもとに首脳レベルでも開催されます。
昨年8月に開催された国連総会で、2021年に開催予定となるHLPFの重要テーマを決める決議が実施されました。その結果、17個のSDGs目標のうち、新型コロナウイルスからの復興と関連性が高い9個の目標について、特に重点的にレビューしようね、ということになりました。
設定された9つの目標は、 目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標12「つくる責任つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標16「平和・正義」、目標17「グローバルパートナーシップ」 です。
これを踏まえ、現在各国が様々な取り組みを実施していますが、じつは進捗状況のランキングを見ることが可能です(ランキングはこちら)。
1~5位を占めているのはスウェーデン、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ。福祉などのランキングでも上位を占めている国々ですね。
ちなみに日本のランキングは17位です。日本の最大の課題として挙げられているのは、目標5「ジェンダー平等の実現」、目標13「気候変動」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」、目標17「グローバルパートナーシップ」。また経済格差や高齢者の貧困など格差是正への取り組みが後退しているとも指摘されています。
まとめ
少し長くなってしまいましたが、SDGsの内容と現状の概要について説明させていただきました。
今は各国で新型コロナウイルスのまん延を抑制することを優先させなければなりませんが、それによってかつての地球環境に負担を与える社会に戻ってしまったのでは意味がありません。SDGsを推進しつつもパンデミックからの復興をめざし、経済を回復させていくことが求められています。