フォークリフト豆知識:一括補水装置と自動補水装置の特徴と違い

フォークリフト豆知識:一括補水装置と自動補水装置の特徴と違い

フォークリフトのバッテリーは、一般的に、2Vのバッテリーセルが複数連結された構造になっています。例えば24Vのバッテリーであれば、12個のセルが直列に連結されています。

各セルにはバッテリー液(精製水)が充填されていますが、自然蒸発や過充電等によってバッテリー液は徐々に減っていきます。 バッテリー液が減ったままだと、バッテリーがダメージを受けて短命化してしまいますので、定期的に精製水を補水する作業が必要になります。

通常、補水作業は1つ1つのセルごとに行うため、バッテリーフォークリフトを何台も稼働させている事業所においては特に、バッテリー液(精製水)の補水作業には大きな労力がかかってしまいます。

それを解決するための仕組みが「一括補水装置」「自動補水装置」です。一括補水装置はトヨタやコマツ製の車両にて多くみられる仕組みで、自動補水装置はニチユ製の車両でオプションとして付属しています。

この2つの仕組みは似ていますが、異なる点もありますので、以下に説明いたします。

一括補水装置

各セル上部に備わっているバッテリー液入水口がホースで連結されており、注水口が1つにまとまっている構造になっています(本記事冒頭の写真をご参照ください)。また各セルの補水キャップ内部には、一定の液量に達すると補水が止まる仕組みの弁が備わっています。

そのため、従来のように1セルづつ補水する必要がなく、全セルへの補水を一括で開始、補水が完了したら給水が自動停止する仕組みになっており、補水作業にかかる労力を大幅に削減させることができます。

例えば48Vバッテリーの補水を行う場合、1セルずつの補水だと約5~10分ほどの時間を要しますが、一括補水装置の場合は加圧ポンプが備わっているタイプの場合は約1/4に短縮することができます。

さらに、補水タンクに加圧ポンプを備えているタイプの場合は、数十秒で補水を完了させることができます。また加圧ポンプの場合、重力式の給水とは異なり、高所に設置する必要が無いので、取り回しが楽になります。

一括補水によって、各セルの液量が均一になるというメリットもあります。各セルの不均一な状態を防ぐことができるので、故障予防となります。

また、補水完了のタイミングで自動的に補水がストップするので、補水中のバッテリー液漏れを防ぐことができます。

液漏れが起こるとバッテリー自体の寿命が減るのはもちろん、バッテリー外装部分に硫酸結晶(白又は青緑色の結晶)ができるため、腐食や端子部のケーブル断裂、バッテリー機能損傷が起こります。硫酸結晶は毒性も高いため、一括補水装置を導入することで作業員の安全対策になるとも言えます。


一括補水装置の製造メーカーはいくつかありますが、キャップ構造にはメーカー各社で特許があり、いずれもスムーズに補水できるように設計されています。キャップは熱にも強い難燃性の素材が使われていることがほとんどです。

自動補水装置(補水くん)

ニチユ(三菱ロジネクスト・旧:ユニキャリア・旧:日産フォークリフト・旧:TCM)社製の車両でオプションとしてつけられる給水システムです。販売開始から20年が経っており、多くのニチユ車両に導入されています。

車両自体に給水タンクがついており、充電器のスイッチをオンにすると、ポンプ内蔵の給水タンクから必要量の精製水が自動的に補水される仕組みになっています。

また補水管圧力センサーにより、圧力上昇を検知すると自動的に給水がストップします。また、学習機能付きタイマー付属のタイプもあり、万一圧力センサー異常が起きた場合も、給水過多による精製水の溢れをふせぐことができます。

必要な作業としては、車両に備え付けの給水タンクに精製水を補水するだけなので、補水時間を短縮して工数や経費削減につなげることができます。また、補水忘れが起こるリスクも軽減できます。給水タンクは、精製水の残量が簡単にわかるような見た目になっています。

2つのシステムの違い

上記2種類のシステムのどちらも、給水作業の工数削減や、バッテリーの劣化防止、安全性の向上という意味で、導入のメリットは同じです。車両自体にタンクがついているかどうかが違いになります。

なおバッテリー交換の際は、どちらのシステムを使っているかによって交換費用が若干変わってくる場合があります。そのため、お見積りを依頼する際にどちらのシステムが付属しているか事前に伝えておくと良いでしょう。

当店のオススメ

当店がおすすめするのは、ドイツ・ハノーパー工業デザイン協会が主催する国際的に権威のあるデザイン賞「iFデザイン賞」において、「iFプロダクトデザイン賞」を受賞したBFSという一括補水装置です。一括補水装置がついていないバッテリーに後付けで取り付けることも可能です(お見積りのご用命はこちらのフォームからどうぞ)。

そろそろ気温もあがり暖かい季節となってきましたが、暖かくなるにつれてフォークリフトバッテリー液(精製水)の減りが早くなります。上記システムを未導入で、工数削減をお考えの方は、是非ご検討ください。

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