電動式は充電式なので、当然バッテリー充電をしなければ動きませんが、必要な作業をきちんと理解していないとバッテリーが短命化する恐れがあります。
この記事では、バッテリーの充電方法や充電に必要な電力、電源コネクタを交換するタイミングなどについて詳しく解説します。
バッテリーの充電方法3種類
電池寿命を長命化するため、バッテリーの種類を知っておきましょう。普通充電(自動充電)
普通充電(自動充電)は、使用した分の電気を最適に充電する方法をいいます。1日のフォークリフト作業が終了した後、バッテリーを回復させますが、100%を満充電としたときに、バッテリーの残量が30~50%になった時に普通充電を行うのがベストなタイミングです。バッテリー残量が75%を超える放電は、避けるのが理想です。充電コードを差し込んだら、自動充電を選択しモニターに充電中と表示されるか最適のボタンを押した際にランプが点けば充電がスタートします。
充電コードを差し込んで「自動充電」を選択してボタンを押すとモニターに充電中と表示される、もしくは「最適」のボタンを押してランプが点いたら充電が開始されます。
均等充電
フォークリフトのバッテリーは複数のセルで構成されています。自動充電だけで充電していると、セルごとに充電のムラが出てきます。 たとえば、あるセルは普通充電によって100%となったものの、別のセルは90%しか充電されていないといったムラが出てしまうのです。均等充電とは、全てのセルが均等に100%を超える充電となるよう過充電することを指します。普通充電と均等充電をバランスよく行うことが理想で、均等充電は月に1~2回(2~3週に1回程度)行うのが良いとされます。
また、長期間稼働無しで保管する場合は、保管前に均等充電を行います。保管期間中も、15~30に日ごとに1回の均等充電を行うようにしましょう。
補充電
1回の充電で1日の作業を終えることができない場合、休憩時間などを利用して充電する充電方法のことです。また、充電が20%以下になると過放電となり、バッテリーの短命化につながるのでバッテリー残量が少ないモノの充電の時間を確保できない場合などは、補充電をうまく使って過放電を避けましょう。1時間の充電で10~15%程度回復させられます。
なお、満充電に必要な時間は、バッテリーの放電状態と容量によっても異なりますが、通常は連続8~10時間程度必要です。補充電を行うときは、充電を途中で中止する事になるため、必ず停止ボタンを押してから電源プラグ、充電プラグの順に抜くようにしましょう。
予約充電
予約充電とは、充電の開始時間や終了時間を予約して行う充電です。あらかじめ設定した使用開始時間までに充電が終了するよう準備できるため、満充電状態で使用開始ができます。夜間の電気料金が安い時間帯に充電でき、バッテリーの液温低下や時間経過による容量の低下などを防ぐメリットがあります。電解液比重の見方
電解液の比重は温度によって変化するため、温度計でバッテリー温度、比重系で比重を読み取り、数値を電解液比重と温度補正換算表の20度における比重地に換算します。20度換算の比重値が1.26~1.28であれば、満充電、比重値が1.180以下の時は均等充電が必要となります。
フォークリフトのバッテリーを充電する際の注意点

雨のかからない風通しの良い場所で充電する トランスなどの発熱体、またはスパークを発生するものの近くで充電しない 使用する前にプラグやケーブル、ターミナルなどに損傷やゆがみがないかの点検を行う 異物混入を防ぐためにセルのキャップは常に締めておく 漏電を防ぐためバッテリーカバーの上部は清潔で乾燥した状態を保つ 電源のかしめ部分に傷みがある、または端子と一体化している電線の付け根が腐食している場合は使用しない 必ず補水は蒸留水または精製水を使用する
フォークリフト充電に必要な電気の使用条件とは?

電動フォークリフトにも単相タイプや三相タイプがあります。三相電源を使うフォークリフトを充電する場合、基本的に以下で記載する業務用の電力契約が必要になります。
電気を使う規模が大きい事業所や施設になると、供給される電圧も大きくなり、逆もまた然りです。業務用の電力契約において、供給される電圧が比較的小さければ「低圧電力」、中小規模であれば「高圧電力」、大規模なら「特別高圧電力」といった形で区分されます。
このうち、供給電圧が200V以下の電圧規模の場合は低圧電力となり、契約電力でいうと50kW未満となります。おもに商店や飲食店、事務所、一般家庭などが対象となります。
一方で、高圧電力とは供給電圧が6000Vの電圧規模を指し、契約電力でいうと50~2000kW未満の範囲となります。おもに中小ビルや中小規模工場などの施設が対象になります。さらに契約電力が2,000kW以上は特別高圧電力となり、大規模工場やオフィスビルなどが対象になります。
それぞれで契約電力の算定方法は異なりますが、契約電力が上がると毎月の基本料金が高くなることは共通しています。電動フォークリフトの導入において契約電力を確認するのは、主に「低圧電力」の場合かと思いますので、ここからは低圧電力の契約について説明します。
低圧電力の契約電力
低圧電力における契約電力の値は、同時に使用できる電力の上限を意味する契約容量(kVA:キロボルトアンペア)を基に決められます。そして、契約容量の決め方には「負荷設備契約」「主開閉器契約」の2種類があります。負荷設備契約
負荷設備契約は、設備の機器容量(kW:キロワット)を合計して決定しています。この方法は、全ての電気設備が常時稼働する前提で契約容量が決められますので、実働時間が少ない場合は基本料金が高くなります。そのため、工場のように常に機器が稼働しているような場合に有利な契約です。ただし、フォークリフトの充電といったように、一部の時間しか稼働しない電源が多い場合は、割高になってしまいます。
主開閉器契約
主開閉器契約はブレーカーの容量(A:アンペア)で基本料金を決定します。契約アンペア数を小さくしてしまうと、ブレーカーが落ちて設備の稼働に支障が出てしまいますが、稼働時間が短い機器が多くある場合はコストを抑えられます。契約アンペア数は検針票を見るか、ブレーカーのところに記載されています。必要となる契約アンペア数や工事の有無を判断するには、使用するフォークリフトの仕様をまず確認します。例えば、電動フォークリフト(TOYOTA geneB 2.5トン)の場合、電源電圧は三相200Vで電源容量は30Aが必要です。
三相200V電源が無い場合は、電気工事をしてコンセントを取り付ける必要があります。その際に、必ずフォークリフトのコンセントの形状を確認しておいてください。具体的には、 20Aストレート式 30Aストレート式 20Aロック式 30Aロック式 といった種類があり、それぞれ形状が違っています。
電力を食う設備がある場合、大きな電流が電線に流れることになるので、建屋の状況によっては細い電線を太い電線に変えたり、トランス交換が必要になる場合もあります。事前に電気工事会社に確認を取っておくと良いでしょう。
参考記事:バッテリーフォークリフトのコネクタの種類について
また、充電に必要な電源容量よりも契約アンペア数が低いと、ブレーカーが頻繁に落ちてしまい、業務に支障をきたしてしまいます。複数台数を同じ電源回路で充電する場合は、その分だけ電源容量も大きくしなければなりません。
車両によっては、単相100Vで充電できるものもあり、100V電源を使用することもできます。ただし、充電にやたらと時間がかかったり、ブレーカーが飛んでしまうことが多発する場合は容量が足りない可能性があるため、契約アンペアを見直しましょう。
他にも気を付けるべき点として、電源が専用回路であれば問題ないのですが、併用回路の場合、電源を使っている他の機器の影響で、想定よりも低い電気しか来ておらず、充電に時間がかかりすぎたりしてしまうことがあります。
バッテリーフォークリフト用充電コード

A:車両側に接続するためのコネクタ
一般的に、泰和電器製やエスシーエス製の平型コネクタで対応できますが、車両メーカーによって適応形状が異なるため、注意しましょう。B:コンセント側のコネクタ(プラグ)
大きく分けて200V用と100V用に分かれます。一般的には業務用の三相200Vコンセントに接続しますが、小型車両の場合は100Vコンセントに接続して充電するものもあります。代表的な形状は、以下のとおりとなります。アンペア数で対応プラグが異なりますので、建屋側のアンペア数を事前に確認しておくようにしましょう。
20A
ストレート式

30A
ストレート式

20A
ロック式

30A
ロック式

搭載されているバッテリーと車両を繋ぐコネクタ

バッテリーフォークリフトの充電コネクタメーカーとして代表的なのが、「アンダーソンコネクタ」と「Rema connector」です。
日本ではアンダーソンコネクタが普及しており、Rema connectorはヨーロッパを中心に普及しています。両者の違いとして、ケーブルのオスメスの有無が挙げられます。
オスメスとはケーブルを挿す側(オス)と挿される側(メス)を意味しますが、アンダーソンコネクタにはオスメスがありません。一方のRema connectorではケーブルにオスメスがあり、両者の特徴的な違いといえます。
さて、日本で普及しているアンダーソンコネクタには対応電流やコネクタの色によって種類が分かれています。
代表的な種類としては以下が挙げられます。
・SB175 ・SBX175 ・SB350 ・SBE320 ・SBX350
各種類の数字は対応電流を意味します。これらの数字はコネクタ表面に印字されていますので、交換の際は必ずチェックしておきましょう。
また、各充電コネクタには灰色、青、緑、黒、赤等の色が存在し、すべてが別々の種類となっています。
例えば「SB175の灰色」と「SB175は青」では互換性がないため、充電コネクタを交換する際には品番だけでなく色の違いまで留意しておくと間違いがないでしょう。
フォークリフトのバッテリーを長持ちさせる充電のポイント

ここからは、フォークリフトのバッテリーを長持ちさせるための充電のポイントをご紹介します。
1.適切な充電頻度を保つ
1つ目のポイントは、適切な充電頻度を保つこと。 バッテリーの頻繁な充電やバッテリーの残量があまり減っていない状態で頻繁に充電することは、バッテリー本体に負荷がかかり、寿命が短くなってしまいます。例えば昼休憩中にちょこちょこと充電するような「継ぎ足し充電」は頻繁な充放電が繰り返され、バッテリーを酷使してしまいます。 充電の目安としてバッテリーの容量が30~35%程度になったら充電をするようにしましょう。
また長時間フォークリフトを稼動させた場合は、バッテリー内で熱を持つため、少し時間をおいてクールダウンさせてから充電してください。
2.バッテリーの過放電を避ける
2つ目はバッテリーの過放電を避けること。 バッテリーは充電のし過ぎもよくないですが、充電が少ない状態が長く続く「過放電」の状態も寿命を短くする原因となります。バッテリー容量が20%を下回ると過放電となるため、バッテリー残量を定期的に確認するようにしておきましょう。
3.バッテリー液の補充や日々のメンテナンスを行う
充電時以外にも、バッテリー液の補充やバッテリー本体を清潔に保つといった日々にメンテナンスも寿命を伸ばすためのポイントです。まず、バッテリー液が不足した状態でフォークリフトを稼動させると、バッテリー内部の温度上昇や、バッテリー極版がむき出しになり適正な容量を引き出せなくなる恐れがあります。バッテリー劣化を早める原因となるため、メンテナンス時に補充することでバッテリー液を適切な量に保つようにしましょう。
毎日使用する場合は週に1回、使用頻度が少ない場合は月に1回程度、バッテリー液の量を確認し必要であれば補充しましょう。補充の際は、各セルに均等に液を入れてください。水分が多くなりすぎると、バッテリー液が吹き出して上面や周辺の腐食につながるため、注意しましょう。
また上部の汚れは自然放電の原因となり、バッテリーの短命化に繋がります。定期的にホコリや汚れを拭き取るなどして、清潔な状態を保ってください。
ホコリなどの汚れのほかに、バッテリーの端子付近や表面に白い粉が付着する場合があります。これはサルフェーションと呼ばれる現象です。バッテリー液が漏れ出して気化後、再結晶化した硫酸鉛で、腐食やバッテリー放電性能を劣化させる原因となります。
サルフェーションは専用のクリーナーを利用することで除去できるため、定期メンテナンスで対応するようにしましょう。
バッテリーフォークリフトの充電コネクタの交換を考えるタイミング

1.充電コネクタに亀裂や歪みなどの異常が見られる
1つ目は、充電コネクタに亀裂や歪みなどの異常が見られる場合です。 コネクタ表面部分の亀裂や本体の膨らみは交換を考えるタイミングといえます。またプラグやソケットに歪みがある場合も、事故につながる原因となるため早めの交換が必要です。 こうした異常は目視での確認ができるため、日頃から充電コネクタの状態を確認して早めの対処を心がけましょう。
2.充電コネクタに焼損や断線が見られる
2つ目は充電コネクタに焼損や断線が見られる場合です。充電コネクタに焼損(焼け焦げたり溶けたりした跡)や断線が見られる場合は、ただちに使用を中止して交換を行いましょう。重大な事故につながるだけでなく、最悪の場合車両や建屋で火災が発生する原因にもなります。
合わせてコネクタ本体だけでなく、コードや端子部分にも焼損がないかを確認するようにしましょう。
3.異音がしたり充電完了までの時間が異なったりする
3つ目は、充電中にコネクタから異音がしたり、充電が完了するまでの時間が毎回異なったりする場合です。 充電の際は、ブーンという低音が聞こえますが、それ以外に充電コネクタから異音がする場合は、内部で断線したり破損が発生している可能性が考えられます。また、「充電が完了するまでの時間が毎回異なる」「プラグを差し込んだときの接触が悪い」といった事象も充電コネクタに異常が起きている可能性があるため、早めの点検や交換を行いましょう。
充電コネクタを長持ちさせるポイント

充電コネクタの破損や断線は、日頃の取り扱い方を注意することで予防ができます。長持ちさせるためのポイントや事故を防ぐためのポイントを確認していきましょう。
ポイント1.充電コードを引っ張らない
1つ目は充電コードを引っ張らないようにすること。 充電コネクタを取り外す際にコード部分を引っ張ってしまうことがあります。この取り扱い方は断線の原因やプラグ部分の破損につながるため、行わないようにしましょう。またコネクタを差し込む際に大きく揺さぶるようにして取り扱うと、端子の変形やコネクタの破損につながりかねません。 取り付け・取り外しの際はきちんとプラグ部分を持つようにし、丁寧に取り扱うと長持ちさせることができるでしょう。
ポイント2.充電コネクタの保管方法に注意する
充電コネクタを長持ちさせるには、保管方法にも注意が必要です。屋外や屋根のない場所に置いてしまい、万が一コード内に水が混入してしまうと漏電や火災、感電といった重大な事故につながる恐れがあります。
また充電場所を確保する際も、屋内で雨などが当たらない場所を選ぶようにしましょう。
ポイント3.充電コネクタを床に置いたままにしない
充電コネクタの破損事故で多いのが、床に置いたままにしておいたコードやプラグを、フォークリフトで誤って踏みつけてしまう事例です。とくに充電直後は車体側のプラグだけを外してそのまま収納せずに使ってしまうケースが多く、「うっかりコードやプラグを踏みつけてしまった…」といったケースも少なくありません。
バッテリーフォークリフトの車体重量は1トンを軽く超えるため、コードの断線やプラグが破損につながります。 こうした事故を予防するために、充電コネクタを使用しないときは、専用のコードリールや壁掛けタイプのケーブルホルダーを使用して保管するようにしましょう。
ポイント4.作業中のフォークリフトに充電コネクタを載せない
フォークリフトで作業する際に、充電コネクタを座席後ろや足もとに載せたまま運転してしまうと、作業中にコネクタが落下する恐れがあります。落下の衝撃で破損や歪みにつながるだけでなく、そのままタイヤで踏みつけてしまったり、巻き付いてしまったりとすると重大な事故につながりかねません。「作業中のフォークリフトに充電コネクタを載せない」という基本を徹底するようにしましょう。
まとめ

また、フォークリフトの充電コネクタは頻繁に使用するため、ついつい取り扱いが雑になってしまいます。衝撃や負荷が毎回かかると、破損や断線につながりコネクタの寿命を短くする原因にもなりかねません。
漏電や火災といった重大な事故が起こってしまう恐れがあるため、日頃から取り扱いは丁寧におこない、メンテナンスや目視での確認を忘れないようにしましょう。
異常を感じた場合は、すぐに充電コネクタの使用を中止し、修理や交換をおこないます。修理・交換には専門知識が欠かせません(例えば、建屋側のソケット工事には電気工事士の資格が必要)。
交換に不安がある場合は無理に自分で行わず、ディーラーや販売店に依頼するようにしましょう。
